説明:動画では物質の構成単位である分子の動きをシミュレーションした結果を見せています。上部には炭酸プロピレン分子(C4H6O3)とリチウムイオン(Li+)が炭素:緑, 水素:白, 酸素:赤, リチウム:黒で, 下部には電極のシリコン(Si)が黄色のフレームで示されています。リチウムに溶媒和している炭酸プロピレンはフレームから球体に表示が変化します。
電極と溶液の界面で起こる電荷移動などの電気化学反応を扱うことは計算物質科学の重要なテーマです。このシミュレーションではリチウムイオン電池(注1)の電極で起こるリチウムイオン(Li+)の電着反応(注2)を計算しています。動画では一つの リチウムイオンが脱溶媒和してシリコン電極に受け渡される様子が計算から捉えられました。反応式で書くと
Li+ (solv.) + e− → Li
という基礎的な反応ですが、そのメカニズムは未だ完全には明らかになっていません。理論グループ内の研究室ではこのような反応メカニズムの解明に向けて日々研究を行なっています。この動画は以下の論文より著者の承諾を得て掲載しています。
論文リンク: https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/cp/c7cp08569a
注1:リチウムイオン電池は二次電池の一種で,スマートフォンやノートパソコンのバッテリーとして広く利用されている。仕組みとしては電極間を移動するリチウムの反応を利用する。作動電位が高く、サイクルによる容量損失が少ないことが特徴として挙げられる。シリコン電極は炭素電極に代わる次世代の高容量電極として期待されている。
注2:リチウムイオンの電着反応は電池を充電する時に起こる反応です。