Research

励起状態

Molecular size insensitivity of optical gap of [n] cycloparaphenylenes (n= 3-16): Y. Noguchi and O. Sugino, J. Chem. Phys. 146 (2017) 144304.

Cycloparaphenylene (CPP)とよばれる最も短いカーボンナノチューブが最近合成され、その励起状態を多体グリーン関数で調べたのがこの論文です。このナノチューブの直径(サイズ)が大きくなるにつれて波動関数の特徴は分子的なものからバルク的なものに変化するが、サイズと共に構造も変化するので励起エネルギーのサイズ依存性は見かけ上小さくなることを説明しました。

Quantitative characterization of exciton from GW+Bethe-Salpeter calculation D. Hirose, Y. Noguchi, and O. Sugino: J. Chem. Phys. 146 (2017) 044303.

励起状態(エキシトン)には局所的(Frenkel)なものと電荷分離型(Wannier-Mott)、リドベルク型があることが知られていますが、これらを定量的に識別する方法は知られていませんでした。そこで、それぞれのエキシトンの特徴量を多体グリーン関数に基づいて与え、それを用いてエキシトンを識別する方法を提唱しました。これによって様々な物質に対する計算をデータベース化することが可能になります。将来的には原子配置とエキシトンの性質の関係づけ、さらには誘起発光や太陽電池機能発現のための物質設計といったものにつながるものと考えています。

GW Γ + Bethe-Salpeter equation approach for photoabsorption spectra: Importance of self-consistent GW Γ calculations in small atomic systems: R. Kuwahara, Y. Noguchi and K. Ohno, Phys. Rev. B 94 (2016) 121116.

横浜国大の大野研究室との共同研究です。多体グリーン関数の精度を上げるための試みを行っています。

界面

Emergence of Negative Capacitance in Multidomain Ferroelectric-Paraelectric Nanocapacitors at Finite Bias: S. Kasamatsu, S. Watanabe, C. S. Hwang and S. Han, Adv. Mater. 28 (2016) 335.

強誘電体と常誘電体の薄膜系で負の静電容量が現れる条件があることを密度汎関数理論に基づく計算から示したのが本計算です。静電容量が負になる条件は自由エネルギー曲線の極大(付近)に相当するのでバルクで負になることはありませんが、界面では準安定に存在することは可能です。それがドメイン形成などの安定化要因に打ち勝って起こることが本計算からわかりました。東大工学系の渡邉研究室等との共同研究です。

Reverse Stability of Oxyluciferin Isomers in Aqueous Solutions: Y. Noguchi, M. Hiyama, M. Shiga, O. Sugino and H. Akiyama, Journal of Physical Chemisty B 120 (2016) 8776-8783.

生体物質と水の組み合わせは生命現象の理解に不可欠です。ホタルの生物発光に寄与するオキシルシフェリンと水の界面を密度汎関数理論に基づくシミュレーションから明らかにしたのが本研究です。従来、水の役割は陰的であり水分子をあらわに取り扱わなくても水和界面は理解できると考えられてきましたが、状況はもっと複雑であることがわかりました。オキシルシフェリンの電荷分布に応じた水和が起こり、それが水中での安定性に直結しています。物性研の秋山研究室等との共同研究です。

電子相関

Four-body correlation embedded in antisymmetrized geminal power wave function: A. Kawasaki and O. Sugino, The Journal of Chemical Physics 145 (2016) 244110.

物質中に電子相関が強いサイトがあるような典型的な不純物問題を扱える方法を提唱したのが本研究です。Hartree-Fock近似(一電子近似)を電子対に対して拡張した平均場理論としてAntisymmetrized Geminal Power(AGP)が知られていますが、そのAGPを物質に対して適用した上でさらに4体相関を取り入れることにより電子状態が極めて高い精度で求まることを示しました。高階のテンソルを低階のテンソルに分解するテンソル解析の手法が電子状態計算に有効であることを示す研究の一例になっており、強相関電子系の電子状態計算の実現への第一歩として考えています。