Research

金属・水界面(電極問題)

電極問題に関連した金属・水界面の研究を行っています。

水の電気分解、燃料電池反応の多くは電極・水溶液界面で起こる複雑な現象として19世紀半ばごろから研究されてきました。最近ではSPring-8等の実験的手段、第一原理計算等のシミュレーションを用いてそのミクロな過程を明らかにできるようになってきており、界面物理の重要な研究対象となっています。

杉野研究室では、阪大・産総研・NECと共同でこの問題に取り組んでいます。

本研究の詳細説明を是非ご覧下さい。

  • O. Sugino, I. Hamada, M. Otani, Y. Okamoto, and T. Ikeshoji, “First-Principles Molecular Dynamics Simulation of Biased Electrode/Solution Interface”, Surf. Sci. 601, 5237 (2007)
  • M. Otani, I. Hamada, O. Sugino, Y. Okamoto, and T. Ikeshoji, “Electrode Dynamics from First Principles”, J. Phys. Soc. Jpn. 77, 0248021 (2008).
  • M. Otani, I. Hamada, O. Sugino, Y. Morikawa, T. Ikeshoji, Y. Okamoto, “Structure of the water-platinum interface; a first principles simulation under bias potential”, Phys. Chem. Chem. Phys (in press).

See also

  • M. Tomonari and O. Sugino, ” DFT calculation of vibrational frequency of hydrogen atoms on Pt electrodes: Analysis of the electric field dependence of the Pt-H stretching frequency”, Chem. Phys. Lett. vol. 437, 170 (2007).
  • 有効遮蔽体法(ESM法)のホームページ(英語)。SIESTAへ組み込むソースコードも公開しています。

有効遮蔽体法(ESM)

上記界面のシミュレーションには有効遮蔽体法(ESM法)と呼ばれる新しい計算アルゴリズムを採用しています。この方法は、電極問題を考える上で最も重要な量である「電位差」を第一原理シミュレーションに導入する有効な方法です。

なお、このESM法の効用は電極問題だけでなく、電位差のかかっていない表面問題にも有効であることがわかっています。従来用いられてきた「双極子補正」問題に煩わされることなく表面の計算が可能になります。

  • M. Otani and O. Sugino, “First-principles calculations of charged surfaces and interfaces: A plane-wave nonrepeated slab approach”, Phys. Rev. B 73 (11) 115407 (2006).
  • 有効遮蔽体法(ESM法)のホームページ(英語)。SIESTAへ組み込むソースコードも公開しています。

励起エネルギー計算(TDDFT-Modified Linear-response)

時間依存密度汎関数理論(TDDFT)は励起状態を計算する新しい方法として注目を浴びています。よく知られているのは、時間と空間に関する局所密度近似 (ALDA)を施した場合、動的線形応答から求めた分子の励起エネルギーはまずまずの精度(0.3eV程度の誤差)を持つこと、電荷移動型励起あるいは Rydberg遷移と呼ばれる励起状態は計算できないことです。この方法は、励起状態を求める実用的な方法としては非常に有効ですので、電荷移動型励起およびRydberg遷移にも適用できるように改良することは非常に重要な課題です。

最近、局所密度近似のもと励起エネルギーを求めるには、どのように考えるべきかを考え、それをModified Linea- response法として構築しています。

  • Chunping Hu, Osamu Sugino, and Yoshiyuki Miyamoto, “Modified Linear Response for Time-Dependent Density Functional Theory: Application to Rydberg and Charge-Transfer Excitations”,Phys. Rev. A 74 032508 (2006).
  • Chunping Hu, Osamu Sugino, “Average excitation energies from time-dependent density functional response theory,” J. Chem. Phys. 126, 074112 (2007).

非断熱結合計算(Nonadiabatic Couplings from TDDFT Linear-response)

励起状態のダイナミクスを計算する際問題となるのは、状態間の遷移の取り扱いです。この問題はLandau-Zener問題として古くから取り扱われてきたましたが、現実系に対して定量的に計算するための方法は未だ確立されていません。

状態間の遷移は大雑把に言えば、運動する粒子の速度と非断熱結合に比例します。非断熱結合は、粒子の運動と共に他の状態がどの程度混ざるかを表す量であり、電子の波動関数の変化分を計算する必要があります。そのため波動関数を精度良く求める必要があると考えられてきました。しかし実はこの量は、電子密度がどのように応答するかを計算するだけで求めることができます。その結果計算は非常に簡単になります。特に電子密度は上記の時間依存密度汎関数理論 (TDDFT)で求めることができますので計算量を極めて軽減させることができます。

このアイディアは他の研究者によって出されたものですが、実際的な計算の手法を示し系統的に応用したのはこの研究が初めてとなります。その計算の結果、これまで計算が非常に困難だった非断熱係数が手軽に計算できるようになりました。非断熱量子ダイナミクスという未開拓の領域に踏み込むための道具が一つ得られたことになります。

  • Chunping Hu, Hirotoshi Hirai, and Osamu Sugino, “Nonadiabatic couplings from time-dependent density functional theory: Formulation in the Casida formalism and practical scheme within modified linear response”, J. Chem. Phys. 127 064103 (2007).
  • Chunping Hu, Hirotoshi Hirai, and Osamu Sugino, “Nonadiabatic couplings from time-dependent density functional theory: II. Successes and challenges of the pseudopotential approximation”, J. Chem. Phys. 128, 154111 (2008).

See also

  • O. Sugino and Y. Miyamoto, “Time-Dependent Density Functional Theory”, Lectures Notes in Physics vol. 706 (2006), edited by Marques Ullrich Nogueira Rubio Burke and Gross, p.407-419, Springer.

マルチカノニカル法(構造相転移)

物質の三相(固体、液体、気体)の相転移を予測することは第一原理計算の重要な課題です。自由エネルギーをそれぞれの相に対して求めて比較することにより相転移点が求まります。自由エネルギーを求める計算は一般に多大なる計算時間が必要となります。これは相境界を越えるのに高いポテンシャル障壁を超える必要があるためです。従来は中間的なモデル系を導入してそれを経由する経路を考えるなどの方法が用いられてきましたが、マルチカノニカル法を用いれば直接に障壁を越えるられます。このことに着目して、自由エネルギーを計算するためのより一般的な方法を構築することができました。

  • Yoshihide Yoshimoto, “Extended multicanonical method combined with thermodynamically optimized potential: Application to the liquid-crystal transition of silicon”, J. Chem. Phys. 125, 184103 (2006).

See also

  • O. Sugino and R. Car, “Ab initio molecular dynamics study of first-order phase transitions: melting of silicon” Phys. Rev. Lett. 74, 1823 (1995).