SUGINO group, first-principles approach to structure and dynamics at surface/interface, Physics and Chemistry

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Welcome to Sugino group (ようこそ杉野研究室へ)  

本研究室は機能物性研究部門に所属し、数値シミュレーションを用いた物性研究を行っています。研究スタッフは杉野(准教授)と助教2名、ISSPリサーチフェロー1名、ポスドク1名、学生2名(博士課程2)、研究生1名、担当秘書1名の計9名です。

研究員募集  

本研究室では、現在研究員を1名募集中です。
詳細は、研究員募集

研究概要  

当研究室のテーマは、(1)数値シミュレーションによる物質研究と(2)数値シミュレーション手法開発です。この二つは車の両輪に例えられます。両方を推進して初めて、高度な研究が可能になります。

数値シミュレーションによる物質科学  

物質は無数の粒子(原子核と電子)で構成されており、その多様性は膨大です。自然界に存在する物質、あるいは、これまで人工的に合成された物質は、そのごく一部にすぎません。物質の可能性を探るためには、最新のスーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションが有効です。

多体摂動論を用いた電子状態計算  

凝縮系物質の最も標準的な計算手法は密度汎関数法(DFT)ですが、バンドギャップが過小評価されるなどの問題があります。DFTで模型化されて導入されている「交換相関汎関数」を多体電子論の「自己相互作用演算子」を用いて補正する(※1)ことにより、精度を向上できることが知られています。この次世代型の電子状態計算手法を用いることにより、これまであまり研究が進んでいない「物質の励起状態」の研究に分け入ることが可能になります。

野口らは、CdSeクラスタ[1]やアルカリ原子(Li, Na, K)や水素原子を内包したフラーレン(C60)[2]、warped nanographeneとよばれる5-7員環の欠陥を持つ炭素クラスタ[3]の光励起スペクトルの特徴を明らかにしてきました。計算による励起スペクトルを実験値と比べることにより、今後、これらのクラスタの構造をより詳細に決定できるものと考えられます。

弘瀬や宍戸はこの手法を用いて計算を行い、小さな分子や菱形構造を持つナノグラフェンにおける多体効果について明らかにすると同時に、多体摂動論の限界についての議論を行いました。

(※1)いわゆるGW補正のこと
[1] Y. Noguchi et al. (2012)
[2] Y. Noguchi et al. (2013)
[3] Y. Noguchi et al. (2015)

固液界面の構造と化学反応動力学  

界面で起こる非平衡動力学は現代の物質科学の重要課題です。

VolmerStrobo.png

貴金属と水溶液の界面はその典型的例であり、中学の理科で習う水の電気分解や燃料電池反応といったものを微視的に理解することは、実は19世紀からの課題です。電気自動車などに用いられているリチウムイオン二次電池は、物質探索が功を奏してそれまでの二次電池を刷新したわけですが、非平衡動力学のレベルからの理解が進めば、新しい原理の電池すら見つかる可能性があります。

Born-Oppenheimer近似に基づくいわゆる第一原理分子動力学計算は、固体電子論を用いた(原子核の)非平衡動力学の計算手法です。本研究室ではこの手法を発展させ、白金と水の界面における水素発生の動力学(前半のVolmer反応とよばれるもの)[1]や酸素還元反応(酸素が水素イオンにより還元され水になる反応)[2]の様子を明らかにしました。[2]では白金と他の貴金属の違いについても研究を行いました。

これらの研究は、有限温度、有限電位の下で白金と水の界面にどのような双極子場が形成され、どのように水の水素結合網が形成され、その結果どのような化学反応が起こるのかを追跡する壮大な計算機実験です。もちろん多くの近似の下で計算を行っていますので、その定量性の評価はこれからの課題ですが、恣意性を抜きにしてどのような化学反応が起こるのかを調べられる段階に到達しています。

[1] M. Otani et al.(2008)
[2] Y. Okamoto et al. (2010)

笠松らは同様な手法を、将来の燃料電池車向けの白金代替物質(ZrO2等)に対して適用し、開発への貢献を行っています。

ここで用いたシミュレーションは10ps以下の短いものですが、固体電子論を用いた計算結果を再現するようなイジング模型を作り、モンテカルロ計算を行うことにより、統計的な観点から正確な結果を得ることができます[3]。この研究は白金上の水素原子の吸着という簡単な系に対するものですが、さらに発展させてより複雑な系に適用できるようにしたいと考えています。

[3] T.T.T. Hanh et al. (2014)

ホタルの発光物質  

ホタルの発光はルシフェリンという分子が担っています。これは物性研内の秋山研究室の研究課題です。野口は秋山研との共同研究を行い、第一原理分子動力学計算と多体摂動計算を行い、この物質の励起スペクトルの解明に挑んでいます[1]。完全な解明のためには、水溶液内でどのような構造をとり、光で励起された後にどのように緩和が起こり、そして発光に至るのかを調べる必要がありますが、その第一歩の計算となります。

[1] Y. Noguchi et al.(2014)

数値シミュレーション手法開発  

物質の多様性は粒子数と共に指数関数的に増加しますが、計算機の性能も年々指数関数的に向上しています。多様性の追求は、アルゴリズムの開発により加速させることができます。

多体摂動論に基づく励起状態計算手法  

物質に光(電磁波)を当てると、化学反応や構造変化、あるいは、別の物質への相転移等が起こります。その全貌の解明は、これからの物質科学の大きな課題です。デバイスや生物の研究にとっても重要です。

その出発点は、光照射後の電子状態(励起状態)を正しく理解することにあります。しかし、励起状態の計算は非常に困難でした。そこで、野口と弘瀬は、量子力学の基本方程式(※1)に基づき励起状態を計算するためのプログラム開発に取り組んでいます。

これまで「多体摂動論に基づくグリーン関数法」を用いたプログラムが開発され、100原子を超える物質の研究が可能になっています。フラーレン[1]やナノグラフェン[2]、ホタルの発光物質(ルシフェリン)[3]などの光吸収スペクトル計算などに応用されています。また、X線吸収スペクトルの定量的な計算(※2)に始めて成功し、実験の解析にも大きく貢献しようとしています[4]。

今後は精度の向上や計算効率の改善などを行い[5]、コミュニティーコードとして用いられるレベルにまで達したいと考えています。

(※1)ヘディン方程式とよばれる。
(※2)10eV以上あった既存の誤差が2-5eVまでに改善。
[1] Y. Noguchi et al. (2013)
[2] Y. Noguchi et al. (2015)
[3] Y. Noguchi et al. (2014)
[4] Y. Noguchi et al. (2015)
[5] D. Hirose et al. (2015)

多体波動関数の高精度計算  

物質中のN電子系の波動関数は3N次元の反対称な関数で記述されます。その膨大なヒルベルト空間の中から基底状態を決めることは、量子力学の永遠のテーマというべきものです。

波動関数は高階の反対称テンソルで規定されます。これを少数の変数で効率的に記述できれば、より多くの電子を精度良く扱うことが可能になります。そのためには、高階のテンソルを低階のテンソルに分解するtensor decomposition法が有効です。

正準フォーマットとよばれる形式で分解すると、波動関数を反対称化ジェミナル積、あるいはBCS波動関数(Hartree-Fock-Bogoliubov波動関数)の線形和で書き表すこととなり、Hamiltonian行列要素がPfaffian代数で容易に与えることができます。こうしたうえで線形和の項数を最小化するように電子軌道を決めてやると、波動関数の最もコンパクトな表現が実現でき、弱相関から強相関の極限までカバーする一電子的理論ができあがります。この方法の有効性を少数多体系(H2Oやハバードクラスタ等)で示しました[1,2]。

将来的には、既存の計算精度をはるかにしのぐ計算手法として発展させていきたいと考えています。

[1] Uemura et al. (2012)
[2] Uemura et al. (2015)

エネルギー変換の界面シミュレーション手法  

二つの物質が接触すると電子移動や物質移動が起こり、やがて平衡状態になります。この非平衡ダイナミクスを利用して、電池や生体膜等では化学エネルギーと電気エネルギーの変換が行われます。これを微視的に理解すれば、究極のエネルギー変換機構が見つかる可能性があります。

19世紀にその原理が初めて見つかり、その後電気化学として体系付けられましたが、微視的な研究が始まったのは、今世紀になって測定や計算の技術が発展して以降のことです。

固体物理学の電子状態計算手法がこの研究に特に有効です。さらに、固体と液体の界面に電位差を与えた上で[1]、開放系の分子動力学計算を行う機能の追加が完成すれば、電子・原子スケールでの理解を着実に進めることができるはずです。その究極のシミュレーション手法の実現に向けて10年以上の間、東北大、大阪大、産総研、物材機構と共に開発を行ってきました。この研究はJST-CREST、京コンピュータやポスト京コンピュータの重点課題[2]、NIMS-GREEN等の支援を受けて行われ、これまで、白金等の貴金属での燃料電池反応や水の電気分解の理解が進んでいます。

[1] ESMのページ
[2] CMSIのページ

大学院教育  

当研究室は理学系研究科(物理)に所属し、大学院生の指導を行っています(これまでの経緯と詳細はこちら)。

Sugino group takes part in the eduation of graduate students as a member of Department of Physics, Graduate School of Science, The University of Tokyo.

(Last update 2015.03.22)

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